2021年以降懸念されている問題に不動産市場はどうなるのか?

2021/04/09

前回の記事は、新型コロナウイルス拡大の影響で多くの企業がテレワークを導入した結果、働き方やライフスタイルの多様性が広がり、オフィスの在り方にも変化が生まれるなかで現在の賃貸需要はどうなっているのか解説し、東京都心の賃貸需要は変わらず高いとお伝えしました。

しかし、今後不動産市場に影響を与えるであろう問題にも注意しておかなければなりません。
今回は不動産を取り巻く問題について取り上げます。

2020年問題だった東京オリンピック・パラリンピックが延期

もともと2020年に開催されるはずだった、東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリンピック)が新型コロナウイルスのパンデミックによって延期になっています。

2020年問題とは、東京オリンピック閉幕後に不動産価格が暴落する恐れがあるという懸念です。
というのも世界的なイベントで不動産需要は高く、商業施設やホテル、大規模なインフラ整備が進められ不動産価格の上昇を後押ししていますが、特需で上昇した価格は、特需要因が落ち着いてしまうと暴落するといわれており、実際に過去のオリンピック開催国では不動産価格は下落し、経済成長に打撃を与えています。

今回の東京オリンピック延期に関しての影響はとても大きく、見込まれていた経済効果は得られておらず、2020年の実質GDPはマイナス4.8%と11年ぶりのマイナス成長となっています。

その影響は不動産価格にも表れてくるかと思いきや、それぞれのセクターに差はあるものの暴落などは起こらず賃貸住宅市場などは堅調に推移しています。その背景には緊急経済対策により市中にお金がばら撒かれたことも一因だと考えられています。

2021年の公示地価は6年ぶりの下落

国土交通省が公表した2021年の公示地価は、新型コロナウイルスの影響が鮮明に表れており全国全用途平均は6年ぶりに下落に転じました。また全国の住宅地は5年ぶりの下落、全国の商業地は7年ぶりの下落となりました。

コロナ禍によってインバウンド需要が喪失してしまった大都市圏の商業地などは、その下落が目立ってはっきりしています。特に観光客の多い銀座や浅草、歌舞伎町などは2桁のマイナスで著しく下げています。

下落に転じた公示地価はこのままコロナ禍の影響を受けるでしょうが、用途や地域によるバラつきが顕著になると考えられていて、インバウンド需要の減退による下落とは逆に、巣ごもり需要による上昇もみられ、その変化の程度は需要や希少性でピンポイントでその地価に影響してくると予想されています。

2022年問題で不動産価格はどうなる

2022年問題とは、生産緑地問題ともいわれており、都市計画に基づいて指定された市街化区域内において、農地として指定を受けた土地のうち80%が2022年に管理期限を迎えるため、宅地として市場に流通して地価が暴落するのではと心配されています。

しかしながら政府による対策が準備されてたり、指定区域外には影響が小さいと考えられているため、全国に波及するような大暴落は起こらないともいわれています。

 

2022年問題については「迫りくる生産緑地の2022年問題について不動産はどうなるのか?」でも具体的な内容に言及しているのでご参考にしてください。

まとめ(賃貸マンションや住宅市場に与える影響について)

東京オリンピック延期の影響は無視できませんが、不動産価格に対する大きなダメージは今のところ目立っていません。
住宅市場についても安定して推移しており、売買、賃貸ともに混乱が起こるようなことは想定しにくいと考えられています。
しかし今後中止になる事も考えられ、その場合インバウンド需要が消失するだけではなく、国内消費も落ち込むことが予想されます。そうなるとオリンピック特需で建設された不動産の価値も見直されるため、東京オリンピックの中止が不動産市場に与える影響は大きくなると考えられますので、今後の対応も想定しておくことが大切になります。

公示地価に関しては、コロナ禍の影響が地価を下げる要因となった地域もあれば、新しい需要が生まれてポジティブな結果になった地域もあります。
住宅地の公示地価トップ10はすべて東京都の港区、千代田区、渋谷区で占められています。1位は4年連続で「港区赤坂1-14-11」が前年比プラス2.5%で上昇しており、2~10位も前年と比べての変動率にマイナスはありません。
もちろん住宅地に対してもコロナ禍の影響はありますが、以上のことからもわかるように利便性の高い東京都心の賃貸マンションに対する価格の暴落などはほぼ無いと考えられています。
ちなみに全国で最も地価が高いのは、15年連続で商業地の「山野楽器銀座本店」(東京・銀座4丁目)が1平方メートルあたり5,360万円でしたが、前年比マイナス7.1%で9年ぶりの下落でした。

2022年問題で大量の宅地が流通するとのことですが対策も進められているし、影響を受ける地域は限定的で、都心部の駅チカなどには生産緑地は設けられていません。
賃貸マンション需要の高いエリアでは2022年問題の影響はほぼないと予想されています。

以前の記事でもお伝えしたように現状の不動産投資市場は堅調に推移しており、改めて東京都心の賃貸マンションに対する需要は高く、暴落も考えにくいと予想されていますが、不動産に関わる問題は数多く、コロナ禍にあって先行きは不透明で住宅ニーズの変化や多様化は広がりをみせると考えられています。
だからといって極端に賃貸市況が悪化するということは考えにくいですが、賃貸マンション経営においてリスクや問題の影響を考えることはとても大切なので、不動産に関わる話題には注意して見ておくことをおすすめします。

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