賃貸住宅市場の動きと賃貸ニーズを把握する
2023/02/17
賃貸住宅市場に大きな影響を与えた新型コロナウイルスも5類へ移行することが決定し、東京都も警戒レベルを引き下げるなど、少しずつ日常を取り戻しつつありますが、暮らし方や働き方の変化も定着してきた今年の繁忙期はどのような傾向が見えるのか、さまざまな調査からこの先の賃貸住宅市場を考えてみます。
入居希望者の動向と賃貸ニーズの変化は
リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社が、首都圏1都3県と大阪市・名古屋市の賃貸不動産仲介会社405社に対して行った「2023年引越しシーズン(1~3月)における新型コロナウイルスの賃貸不動産マーケットへの影響調査」が発表されました。
仲介会社のインフラの変化についての設問では、前回調査(2022年の第二繁忙期(9月~10月))と比較して、webでの内見予約、web申込み、IT重説、電子契約の利用割合が半年間で増加しており、web化が進みツールの普及も加速していることがわかり、入居希望者もwebでの対応を望んでいることも予想できます。
個人の2023年繁忙期(1月〜3月)はどのような動きが予想されますか?との問いには、問い合わせ、内見、申込みのすべての項目で「増える」との回答が60%を超えており、その理由としては「コロナに社会全体が順応してきている」「12月から探し始めている方もいる」「外国籍が増える」と考えられています。
では、これから増えるであろう入居希望者が賃貸住宅に求めるものは何か。
同調査からは、テレワークを想定しての部屋探しは一定数根付いており、インターネット環境についても「ネット無料」や「回線速度」への希望は依然として高い状況が続いていることがわかります。
その他需要の高い専有部設備と共用部設備の上位5位は下表の通りです。
専有部設備 | 共有部設備 | |
1位 | バス・トイレ別 | オートロック |
2位 | 通信速度の速いインターネット環境 | 宅配ボックス |
3位 | 独立洗面台 | モニター付きインターホン |
4位 | 防音性の高さ | エレベーター |
5位 | 居室内の広さ | 防犯カメラ |
Z世代の賃貸ニーズを理解する
アットホーム株式会社が、賃貸物件で現在一人暮らしをしているZ世代(17~26歳)の400名にアンケート調査した「Z世代のライフスタイルに関する調査」によると、6割以上が「ライフステージに応じて違った場所に住みたい」と回答しています。
そのZ世代が重視する住まいの条件として最も多かった回答は「通勤・通学に便利」で51.5%でした。また重視する住まいの設備では「独立洗面台」で37.5%です。
重視する住まいの条件 | 重視する住まいの設備 | |
1位 | 通勤・通学に便利 | 独立洗面台 |
2位 | 間取り・広さ | モニター付きインターホン |
3位 | スーパーマーケットが近い | インターネット無料 |
4位 | 最寄り駅から近い | 2口以上コンロ |
5位 | 治安が良い | オートロック |
行動制限の解除も進み、大学や専門学校も対面での授業を増やしているため通学回帰も見られ、通学・通勤の利便性への需要が戻ってきていると考えられます。
また「Webフォームからの入居申込」や「電子サイン」については、いずれも7割以上が「利用したい」「どちらかと言うと利用したい」と回答しており利用意向の高さがうかがえます。
調査を比較してわかってくる賃貸ニーズ
2つの調査から見えてくるのは、賃貸需要は戻ってくるということです。
入居希望者は立地が良く少し広めの部屋を探していて、webでの内見予約や申込みを希望しており、電子契約などITツールの利用にも抵抗がありません。
お部屋や建物の設備は、「高速インターネット(無料)」「独立洗面台」「モニター付きインターホン」「オートロック」が完備されていれば満足度が高く需要が高いです。
まとめ
これからの市場動向と賃貸ニーズについて、ご理解いただけたでしょうか?
Z世代の住まいの価値観は、転職・結婚などに合わせて住まいを変えたいという意向が強く、この先何十年と住宅市場全体のメインターゲットになっていくと考えられます。
そして新型コロナウイルス感染症の影響も落ち着いてきて、通学・出社回帰での需要や外国人の需要も増加すると予想されています。
つまり、今後の賃貸需要を喚起する、Z世代や外国人の価値観やライフスタイルを見据えた物件選びや管理、改修、集客など、変化する時代と共に柔軟に対応していくことが求められそうです。