新型コロナウイルスに翻弄される晴海フラッグの行方は

2021/04/26

以前の記事で2020年問題に言及し、東京オリンピック・パラリンピックの延期の影響についてお伝えしました。

今回はオリンピック閉幕後の選手村跡地の活用に関して、湾岸エリアの新たな街として再開発が行われる「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」について、新型コロナウイルスの影響で今後どう評価されていくのかみていきたいと思います。

晴海フラッグ(HARUMI FLAG)とは

晴海フラッグ(HARUMI FLAG)とは、東京オリンピック・パラリンピックの選手村として利用された後に、改修工事をして新たな街として生まれ変わる予定の超大型都市開発プロジェクトです。

 

東京駅にも近い東京都中央区晴海の、3方を海に囲まれた総敷地面積13万平方メートル超(133,906.26㎡)の広大な土地に24棟のマンションが建設され、うち2棟は50階建てのタワーマンションとなります。

 

総計画戸数は5,632戸で、分譲住宅で4,145戸、賃貸住宅(シニア住宅、シェアハウス含む)で1,487戸です。その他に店舗・保育施設、介護住宅、商業施設の区画が計画されています。

 

晴海フラッグのエリア総人口は1.2万人を想定しており、エリア内にはマンションだけではなく、大型商業施設や公園、教育施設(保育施設・小中学校)が計画されています。またマルチモビリティステーションや水素ステーションなどの交通やエネルギーに関する施設の整備も予定されており、街の中だけですべてが揃う環境を目指しています。

今後の動向を考えるうえで押さえておきたいポイント

オリンピックレガシーとしての付加価値を高められるのか、それともコロナ禍という特殊な環境で想定外の動向をみせるのか、そのポイントをみていきます。

①立地と交通利便性

直線距離で銀座駅まで2.5km、東京駅まで3.3kmと好印象ですが、最寄り駅の都営大江戸線「勝どき駅」まで徒歩20分前後と、棟によってばらつきがありますが駅チカとは言い難い距離です。

また湾岸エリアと都心をつなぐ新たな交通システムとして注目されているBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)は、通常のバスよりも効率よく多くの乗客を輸送できるとのことですが、専用レーンが敷設されるわけではないので渋滞なしで運行できるのか、またエリア内人口の通勤通学の足として耐えうるのかは不透明です。

しかし、その他にも通常のバスも運行していますし、シェアサイクルも利用できるかもしれません。また将来的には自動運転の交通手段が運行することも可能性としてありますので、様々な交通手段によって都心へは出やすい立地といえそうです。

②物件の状態と物件価格

選手村として21棟1,860室の眺望の良い宿泊マンションが建設され、数ヶ月の期間中に活用されたその跡地が、オリンピックレガシーを有した新しいマンションとして再整備され、新たな街づくりが進められます。

世界にアピールできる選手村としてゼロからつくり上げているので、各国の選手が不自由なく利用できるようにお金がかけられており機能性は高く、先進的な水素エネルギーのインフラ整備やバリアフリーも徹底されています。

それでいて湾岸エリアの近隣マンションより坪単価は低く、値ごろ感があると判断されている方も多いようです。

新型コロナウイルスの影響による特殊要因

そもそも晴海フラッグの物件は、第1期分譲の売り出しから入居まで4年先になることはわかっていましたが、まさかの東京オリンピック・パラリンピックの延期という予想だにしない出来事が起こり、引き渡しの時期も延長されることは容易に想像できます。

この引き渡し時期が未定となる異例の事態において問題になってくるのが、住宅ローンを組んで購入する際の金利になります。
4~5年後の融資実行時に今より金利が上昇しているかはわかりませんが、仮に今より金利が高くなっていると、現在の金利でシミュレーションしていた金額よりもローンの支払総額が増えたり、借り入れの上限金額や必要な年収も変わってきてしまいます。
また年齢も重ねるのでローン期間が短縮されるケースもあり、その際には月々の支払いも増えることになります。
以上のことからもわかるように、引き渡しまでの期間が延長することは最大の懸念点とも考えられます。

またコロナ禍の特殊要因として、感染者(軽症患者)の一時的な受け入れ施設として活用するプランが小池都知事や一部の医療関係者から提案されたようですが提案止まりで進んではいないようです。
ホテルを滞在施設とした時とは違い、購入する居住物件となるとその動向が気になるところだと思います。

まとめ

東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地の再開発事業として、東京都中央区に晴海フラッグという大規模な街が誕生し、東京ど真ん中という立地の価値は高いといえます。

マンションの価値は立地や交通利便性だとの声もよく聞かれます。
それでいうと立地は抜群、交通利便性については現時点では良いとはいえず不確かな部分がまだあります。

建物についてはグレードや機能性も高い割に、販売中止前の坪単価を見ると、周辺マンションと比べて割安感があります。
新築・中古マンションともに需要が高まり価格が上がっている現在において、東京都中央区のマンションが割安で手に入ると考える方が多いようです。

しかし現在では販売も中止し、引き渡し時期も未定としているため、将来の金利上昇リスクや不動産市況の不透明感が懸念されます。また新型コロナウイルス感染者の収容施設としてのアイデアが実行されるのかどうかも気になるところです。

良くも悪くも話題の豊富な晴海フラッグはコロナ禍に翻弄され、オリンピックレガシーとしての付加価値も不透明な状態でその価値については賛否両論あり、状況によっては周辺地域の物件や都心部のマンション価格に影響が出るのではないかとの憶測も出てきています。
今後の行方はオリンピックが中止となるかが大きな分岐点だといえそうです。

しかし世界中がコロナ禍で暗い話題ばかりなので、各国の方々に日本のおもてなしを感じて欲しいと思いますがなかなか厳しい状況なので、東京オリンピック・パラリンピックは開催し、明るいニュースを届けて欲しいと願います。

関連記事