イマジン・コーポレーションブログ|株式会社イマジン・コーポレーション

未曾有の事態での東京オリンピックの経済効果は?

作成者: マーケティング部|May 7, 2021 8:10:14 AM

周知の通り、2020年に開催されるはずの東京オリンピック・パラリンピックは2021年に延期されました。オリンピックの歴史上でも経験したことのない非常事態になっています。

 

2013年9月に2020年東京大会の招致が決まってからさまざまなトラブルを経てここまできていますが、それを乗り越えて開催を目指している東京オリンピック・パラリンピックの経済効果についてみていきます。

そもそも経済効果とは何

経済効果(経済波及効果)とは、一つのイベントや事象においてその需要を満たすために生産が連鎖的に誘発されることをいいます。
またそれによって消費者や企業などが、直接的、間接的に消費や投資をした金額の合計額(生産誘発額)を指すこともあります。

経済効果は、「直接効果」「一次波及効果」「二次波及効果」の三種類の経済効果の合計で算出されます。
直接効果とは、事象に対して直接行われるさまざまな消費をまとめていいます。例えばオリンピックの観戦チケットや関連グッズの購入などが直接効果に当たります。

一次波及効果とは、直接効果の需要を満たすために新たな需要が誘発され、増加した額のことをいいます。例えば観戦客が関連グッズを購入すると、卸している企業や制作している企業の売上増加が見込めます。これを一次波及効果と呼びます。

二次波及効果とは、直接効果や一次波及効果の結果、所得が増加した分が消費に向かう増加額のことをいいます。

経済効果には注意点もあって、企業や自治体など各所から発表する試算にはばらつきがあり、そもそもの前提条件が異なっていたりして、同じ事象についても違う結果が公表されることも多いため注意が必要です。

東京オリンピック・パラリンピックの経済効果は?

東京都オリンピック・パラリンピック準備局が2017年3月に公表した、「大会開催に伴う経済波及効果」の試算では、分析対象期間2013年から2030年までで、需要増加額が東京都で約14兆円(直接的効果で2兆円、レガシー効果で12兆円と推計)となっており、経済波及効果は東京都で約20兆円、全国で約32兆円となっています。

しかしながら1年延期されたことによる経済的損失額は約6,400億円で、仮に無観客で開催された場合、経済波及効果ベースで3.2兆円程度が失われるともいわれています。
また、中止となった場合の経済的損失額は約4.5兆円以上との試算も出ています。

ただ無観客開催となっても、観戦のためのテレビやプロジェクター、レコーダーなどの耐久消費財の買い替えや関連グッズなどの需要は期待されています。
また現在までにインフラ整備への投資が進んでいるので8割近くの経済効果が出ているともいわれており、その額でいうと13.8兆円程度と試算されています。

不動産への影響は

開催地が東京と決まって以降、有明や豊洲などの湾岸エリアを中心に多くのマンション開発やインフラ整備が進み注目が集まっています。
東京都心部のマンション需要は旺盛で、供給が全く追いつかない状況で地価公示価格も上昇を続けています。
しかし、オリンピック開催後は供給過多などの影響で不動産価格が下落する可能性があるのではとの懸念がありますが、オリンピック開催に向けて開業された新駅の「高輪ゲートウェイ駅」や「虎ノ門ヒルズ駅」も期待されていますし、日本一の超高層ビルの建設に向けて「東京駅前常盤橋プロジェクト(仮称)」や「麻布台ヒルズ(仮称)」などの東京都心の開発も旺盛です。
オリンピック開催のために実施されてきた公共事業などの経済効果はすでに実現していて、より活かすような再開発が進められているので、東京の不動産への価値は保たれると考えられます。

まとめ

経済効果は発表する企業や自治体によって算出の前提条件などが違い試算にばらつきがありますが、新型コロナウイルスが感染拡大する前に期待していた経済効果を得ることは厳しい環境になってしまい、経済に対する打撃は大きいです。

また開催までもが不透明になってきたなかで、開催を巡って経済効果だけで話を進めるのも難しいですが、緊急事態宣言下では1ヶ月で1.5兆円の経済損失が出ているという報告もありますので、国内外の一般観客を入れて感染拡大してしまった場合、より厳しい緊急事態宣言が発令される可能性もあり、そうなればさらなる経済損失も免れませんので、東京オリンピックをどうするかはより難しい状況であるといえそうです。

56年ぶり2回目の東京オリンピックに対して、経済的にも大きな期待が高まっていたところへ、想像もできないような事態になってしまい国民心理的にも失われるものは計り知れません。
いまだ中止なのか延期なのかは結論が出ておらず、東京オリンピック開催に向けて期待と不安が入り交じる状況ですが、ワクチン接種が徐々に進んでいますし感染が縮小して安全な状況で開催されればと祈るばかりです。